武術修行に於ける最も肝心なこと「自信」

目次

運動神経の良さは後天的に鍛えられる

人間には生来的な素質があります。
どの分野に素質を持って生まれるかは各自によって異なりますが、武術という点で考えるとまず武術は肉体の関節動作を伴う運動行為であり、全身の連動を実行する身体操作となります。

神経細胞とその支配神経から命令を伝達されて収縮する筋肉細胞とそれによって可動する各関節部のリズミカルな連動を自らの肉体に於いて実行させる運動の体系が武術の技法です。

ゆえに武術の技法稽古に於いて重要な素質は、中枢神経である脳脊髄から末梢神経を通じて肉体各所に伝達される電気化学的情報伝達いわゆるインパルスのスムーズさ、そして情報伝達を受けた筋肉細胞が収縮して物理的力を発揮してその収縮した筋肉の拮抗筋が弛緩することによって関節が可動するスムーズさ、この二つとなると思われます。

この二つがスムーズに出来る人を世間では「運動神経が良い人」と言い、スムーズに出来ない人を「運動神経が悪い人」とか言いますよね。

このいわゆる運動神経の良さは生来的に個人差が出ます。
しかし、同じ動作を反復することによって運動神経の良さは鍛えることが出来ます。
生来的に運動神経が良い人はますます伸び、生来的に運動神経が悪い人も反復することによって確実に伸びます。
ゆえに継続することが重要となります。

武術の修行は素質よりも根気が重要

継続することに必要なのは根気です。
根気とは粘りです。
現状では出来ない難しい技法が壁として目の前に現れたとき、それを突破するには粘り強く反復稽古を継続するしかありません。

数は力でありその技法の動作を反復した数は自らの糧となり、その努めた時間は必ず鋭さと威力を伴った斬撃に繋がる礎となります。
力必達(つとむれば かならず たっす)の教えの通りです。

数をこなすことは、生来的な運動神経の良さ悪さを覆すことが出来ます。
めげずに粘り、根気強く継続するのが武術修行の最も重要な素質であり、それを可能とするのが自らを信ずる心、すなわち「自信」となります。

自源流は敵との戦闘の際、一振りで勝負を決めることを最上としているので、それを目標に志して斬撃の稽古をするべきだと考えます。
現実的には連撃することは良くあることですが、精神として、一撃で勝負を決めることを理想として稽古するように心掛けることが重要ということです。

二之太刀を 在ると思うな 一打ちに 命を押し込めてまし
にのたちを あるとおもうな ひとうちに いのちをおしこめてまし

二之太刀を 在ると思うな 一打ちに 敵を傷めよ 當流の味
にのたちを あるとおもうな ひとうちに てきをいためよ とうりゅうのあじ

自源流の理歌(りか)二つ、當流とは当流のことであり、自源流の人が當流=当流と言えばそれは自源流のことであり新陰流の人が當流と言えば新陰流のことです。
二つの理歌は敵と戦闘する際の気宇のことを説いています。

二つとも、一打ち=一振りで勝負を決めろという意気込みを主張しています。
互いに真剣を用いた斬り合いは、瞬間の攻防に全てが在るがゆえの、この理歌なのだと思われます。

実際に戦闘の経験のある人間なら誰もが分かることですが、敵との勝負のとき、自らを信ずる不動心が無ければ精神が脆く崩れて戦う前に負けます。
これも含めて、やはり武術修行で最重要な要素は「自信」だと思われます。

互いに自信を持って稽古したいと思います。

加地

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次